遊木くんの様子がおかしい





――…



古文の授業中。

私はちらりと隣に座る彼の手をもう一度見てみる。



机に置かれた左手の甲には、黒マジックで大きく「三島さん」の文字が確かに書かれていて。



……やっぱりこれ、

どう考えても私のことだよね。




「……」




気になる…。

なんで「三島さん」って書いてるのか、めちゃくちゃ気になる。


遊木くんが書いたの?

なんで手の甲なの?

私のことなの?




「?」




なんて視線を送り続けていると、遂に遊木くんに気付かれてしまった。


いや、むしろ好都合。

私は遊木くんの手を指差しながら、小声で尋ねてみる。




「それ何?」


「え?」


「手。手の甲の文字!」


「…あぁ、これ? 罰ゲームで書かれた」




…罰ゲーム?

もしかしてさっきのティッシュ遊び?




「…なんで私の名前なの?」


「さあ、皆が勝手に書いた。「お前は三島さんにちょっかい掛けすぎ」って」


「……」


「女子の名前を手に書いて恥ずかしがって欲しかったみたい」


「…恥ずかしい?」


「いや全然」




…でしょうね。

なんだ……そんなことか。


ていうか、遊木くんは恥ずかしがってないみたいだけど、なんとなく私の方が恥ずかしいよ。



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