遊木くんの様子がおかしい
――「遊木くんっ」
授業が終わってすぐ、私は隣の遊木くんに体を向けて筆ペンを差し出した。
「ペン……ありがとう」
「はーい」
「……」
平然と私からペンを受け取る遊木くんを眺めながら、私はモヤモヤとした気持ちを溜め込む。
…さっきのこと、何も言ってこない。
死ぬほど笑ってたのに…。
かと言って私から「書きづらかったんだけど」とも言えない。
だって、借りたのはこっちだし。
文句みたいになっちゃう。
「あれ、てかもういいの? 筆箱忘れたんでしょ?」
「あ…恵美に借りるから大丈夫! ありがとう」
「そっか、了解〜」
そして机を片付け終えた遊木くんは、ガタッと席を立って教室を出ていってしまう。
……あんまり話したことないから、遊木くんがイマイチどんな人か分からない。
でも、ペン貸してくれたし優しい人なのは確か。(筆ペンだったけど)
もっと私がコミュ力高ければいっぱい話せるんだろうなぁ。
「なんで筆ペンなの〜」って、ノリ良くツッコめたりしたのかな。
せっかく隣の席になったんだし、少しでも仲良くなりたいんだけど…。
ペンだけじゃやっぱり無理か。