遊木くんの様子がおかしい
「宇紗子、やるわね」
突然聞こえた声にぎょっとする。
声のした方に顔を向けると、恵美がニヤニヤしながら立っていた。
…なっ、戻って来てたの!?
「何がっ」
「鹿野くんに決まってるでしょ〜。めちゃくちゃ良い雰囲気出てたよ」
「いや声掛けてよ!」
「あんなキラキラした空気で声掛けられるわけないでしょ。連絡先まで交換しちゃって、良い感じじゃん」
「……あのね、なんでもそういうことに結びつけないの」
「だって宇紗子可愛いのに彼氏作んないんだもん。私は鹿野くん良いと思うよ」
ぽんぽんと背中を叩かれ、私は溜息をつきながら彼女を睨む。
遊木くんって言ったり鹿野くんって言ったり……
せめてどっちかに絞って応援してよ。
…いや、応援しなくていいけどさ!
「宇紗子的にはどっちがアリなの?」
「……そういうアリナシの話はしません」
「ちぇー。でもほんとの話、相談してくれたらいつでも協力するからね」
任せて、と親指を立てる恵美。
私は呆れながらも「ありがと」と笑って返した。
…まぁ、恵美が心配してくれるのはありがたいし。
私も“好きな人ができれば”頑張るよ。