遊木くんの様子がおかしい
「てかさ、よく三島の名前知ってたね」
遊木くんはそう言いながら鹿野くんに顔を向ける。
あ、確かに。
私なんて他クラスの生徒ほとんど分からないもん。
まだ一学期だしさ。
……ていうか鹿野くんですら下の名前分かんないや…。
「あー…まぁ、特徴的な名前だったから覚えてたって感じかな。1組の人も“うさぴょん”とかで呼んでるし」
「ほー」
「可愛い名前だよね」
不意にニコッと笑顔を向けられて、「ふぁ!?」なんて間抜けな声を出してしまう。
かっ、可愛い……ですか。
それはありがとうございます…。
……やばい、絶対顔赤くなってる私。
なんか分かんないけど遊木くんの前でそんな風に褒められちゃうと落ち着かない。
ていうか前は遊木くんもうさぴょんってあだ名可愛いって言ってくれてたような…。
私……宇紗子で良かった……。
「鹿野くん奇遇だね。俺も同感よ」
「あはは」
「まー1組名物の“虎兎コンビ”だしな」
「待て待て1組にそんな名物あるなんて聞いたことないわ」
あれ違った? なんてとぼける遊木くんを大谷くんが笑ってツッコむ。
……“虎兎コンビ”……って、
なんか良いな。
だってコンビになるくらい仲が良いって感じがするし。
…ていうかふざけてるだけなのに、遊木くんのそんな何気無い言葉にまんまと喜んじゃってるよ私。
もちろん恋愛的な意味じゃないけど、私って相当遊木くんが好きなんだな。
もっと気に入られたいもん。