遊木くんの様子がおかしい
「あらあら、男子陣も浴衣と甚平で揃えてたんだ?」
「まあな。女子軍が浴衣で揃えるって聞いたら俺らもやってこーぜってな」
「えぇー! 皆かっこいー!」
「浴衣めっちゃ似合ってる〜!」
「女子も皆可愛いじゃん」
「浴衣着ると全然雰囲気変わるなー」
男子と合流した途端、わっと盛り上がって騒がしくなる1組メンバー。
皆の会話を眺めながら、私はチラッと遊木くんに視線を向ける。
そしてバチッと合う視線。
すすす…と遊木くんは私の隣に移動してきて、声が聞こえるように少しだけ屈んで顔を近付けてくれる。
「三島の浴衣見れて良かった」
「っ……あ、あはは……どう? 似合ってるかな?」
「似合ってる。かわいー」
ぼんっと、確実に熱を増した顔。
やばい。何この感じ。
落ち着かない……けど、全然居心地は悪くない。
「ありがと……。遊木くんも甚平、すっごくかっこいい」
「まじ? やったー」
「今日会えて良かったね」
そう言ってチラッと隣の遊木くんを見上げてみる。
すると、彼は少しの間何も言わず、じっと私を見下ろしてきた。
……む?
「え、何それ可愛過ぎ」
「……へ!?」
「今キュンってなったわ。夏祭り効果で俺も浮かれてんのかな、なんか落ち着かない」
変なのー。って
またいつもみたいに目を細めて笑う遊木くん。
でも、いつもとは少し違う私の感情。
グサッときたような、スカッと気持ちが晴れたような、そんな感覚があった。