遊木くんの様子がおかしい



わ……どうしよ。

遊木くんの隣座っちゃってるんだけど。


学校でも席は隣だったし、

さっき休憩してた時も隣に座ってたけど、


これは……距離が近過ぎる。


だってもう腕当たってるもん。

人多いし狭いから仕方ないんだけどさ!?



……心臓が暴れ回って、花火どころじゃない。




「あっちぃー」




パタパタと手で顔を扇ぎながら空を眺める遊木くん。

その横顔に見とれながら、私も「ほんとに暑い」と返す。




「浴衣暑そう」


「暑い……汗めっちゃかいてるもん」


「あはは」




薄暗い中で見えるあの笑顔にキュンとする。


……あぁ、ほんと暑い。

気温のせいだけじゃないよコレ。




そして、ようやく上がり始めた花火。

身体中に響く花火の振動にいちいち驚きながら、そのあまりにも綺麗な景色に感動する。


花火ってこんなに綺麗だったっけ。




「ぶはっ」




と、そこで隣の遊木くんが不意に吹き出す。

私はきょとんとして肩を震わせる彼を見つめた。




「?」


「三島ビビり過ぎ。子うさぎみたい」


「…なっ、」


「まじで可愛いわ〜」




最高〜と、心底嬉しそうに笑う虎の君。


キュッと閉じられた細い目と

薄い唇の間から見える白い八重歯。



時折花火の明かりでその笑顔が照らされて

ドラマみたいに、キラキラして見える。



……すごい、花火の音より自分の心臓の音の方が良く聞こえる気がする。




あぁ、どうしよう。


もう隠し切れない。




ほんとはずっと前から気付いてた。

けど誤魔化して、自信が持てないから認めれなくて。



今の関係が好きだから、隠してたのに。




私……遊木くんが好きだ。



大好きだ。





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