遊木くんの様子がおかしい
「傍から見ればすごい仲良さそうに見えるけどね」
今度は体育の授業中。
100m走を皆が走り終わるのを恵美と待っているところだ。
私はさっき走ったけど、結果は普通。
これから遊木くんが走ろうとしているのを、ぼーっと眺めている。
「…確かにそうかもだけど…」
でも実際そんな会話は遊木くんとしてない。
なんであんなイタズラをしたのか、なんて。
「それにしても筆ペンっていいね。私も筆ペンで解答欄が埋まるテスト見たら笑うわ」
「後で先生に怒られないかな…」
「大丈夫でしょ。ちゃんと解答してるし」
「ならいいけど…」
そしてレーンの方では、ホイッスルと共に数人が一気に100mを走り始めた。
その中にはもちろん遊木くんもいて。
「…え、速っ」
「遊木えぐ」
ざわっと騒ぐ生徒達。
綺麗なフォームで颯爽と1番を走り抜いて見せた遊木くんに、私も釘付けになった。
…遊木くんめちゃくちゃ速い。
あんなに足速かったんだ。
「すげー! さすが遊木!」
「ハッハッハ〜。どっこいしょ〜!」
訳の分からない掛け声を上げながら、遊木くんは男子達へ順番にハイタッチしていく。
たまたま男子グループの近くにいた私は、段々近付いてくる遊木くんを眺めていて。
ふと、そんな遊木くんとまたバッチリ目が合ってしまった。