遊木くんの様子がおかしい




それから依田くんと席をくっつけたまま授業は始まった。

最初はなんとなく緊張してたけど、慣れてくるといつものように睡魔も襲ってきて。


依田くんがすぐ隣にいるし居眠りなんて恥ずかしくてできないのに……どうしたものか。



なんてウトウトしながら教科書を眺めていると、視界の端に依田くんのノートがスッと入り込んできた。




「?」




見ていいのか一瞬躊躇ったけど、なんとなく私に“見せている”気がして。

私は依田くんのノートの端に書かれた短い文を読んでみる。




『眠すぎね?』




ギョッとして依田くんの顔を見上げると、彼はイタズラっ子のような笑顔を見せながら口パクで「俺も」と言った。


ね、眠そうにしてたのバレてた…。

恥ずかしいけど、依田くんも同じだって分かるとちょっと安心。



そして私も自分のノートの端に返事を書き始めた。




『眠すぎる…zzz』




寝てる猫のイラストを添えて返すと、依田くんはクスッと小さく笑ってくれた。


このやり取りのおかげでさっきまでの眠気がどっかいったな。



それから依田くんは少し何かを考える様子を見せた後、またカキカキとノートに書き始める。




『眠くならないようになんか質問していい?』




ちょっと嬉しくなった私は快く『いいよ!』と返した。




『きょうだいいる?』


『お姉ちゃんがいるよ』


『なんこ上?』


『3つ上』
『依田くんは?』


『弟が2人いる』


『何歳差?』


『1つ下と3つ下』




へぇ〜。

依田くんって長男なんだ。




『彼氏いる?』




その文字を見た時、一瞬だけ動きが止まってしまった。


兄弟の話からそういう話に飛ぶとは…。



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