遊木くんの様子がおかしい
『いないよ』
『好きな人は?』
ドキッとしたのは言うまでもない。
だって目の前に私の好きな人がいるんだもの。
完全に眠気なんて吹き飛んでるよ、依田くん。
でもさすがにここで『遊木くんが好き』なんて言えるわけもなくて。
『いないよ』って、書こうとした。
けど、なんとなく嘘をつくのが気が引けてしまう。
ずっとこの気持ちに気付かないフリしてたことも相まって、なんだかまた否定してしまうのが嫌……っていうか。
なんて不自然にペンを持つ手を止めていると、更に依田くんから追加で文字が書かれる。
『遊木のこと好きじゃないの?』
……えっ。
そ、それは……どういうつもりで聞いてる……?
遊木くんと私が仲良くしてるから、単純に『好きだったりする?』ってノリで聞いてきてる?
それとも私が遊木くんのこと好きなの気付いてて聞いてる?
どうしよう……。
え、なんて答えれば正解?
いや正解なんて無い?
まだ恵美にしか打ち明けてないけど……もし依田くんに話したら、遊木くんに何かの拍子に伝わったりしないかな。
……依田くんはそんなことしないか。
でもそれ以前に……男の子に好きな人打ち明けるなんて死ぬほど恥ずかしいんだけど!?
そんなことを悶々と考えながら私は依田くんの表情を窺ってみる。
依田くんと目が合うと、彼はビックリしたように目を見開いて私をじっと見つめた。
……あ、もしかして
私のこの表情と雰囲気で……完全にバレちゃった?