帰国子女の彼と過ごす日々はきっと甘くなるだろう
陽翔の気持ち
〇陽翔の部屋


小さくノックをして部屋にそっと入る。

陽くんを覗いてみると寝ているようでスースーと寝息が聞こえる。


涙のあとかな……


帰国した時は一人暮らしを決意してすごいなぁと思っていたけど、無理してたのかな?


寒さにやられちゃったかな……

冬のないシンガポールには確かにきついだろう…でもそれだけかな?


やっぱりホームシックしか私には考えられないなぁ……


梨沙の携帯からLINEの通知音がなった。


えっ!先輩から?


吉永 〈明けましておめでとう、1日遅れちゃったけど💦〉


梨沙 「…先輩」


梨沙の声で陽翔は目をゆっくり開けた


陽翔 (…梨沙の声?)


梨沙 「何で先輩からLINE?確か去年は個人の方にはこなかったよね……えーっとどう返そう……やっぱり受験頑張ってくださいかな……どうしよう、嬉しい」


梨沙 〈おめでとうございます。今年もよろしくお願いします!〉


陽翔が目が覚めているのも気づかずに独り言をぶつぶついいながらLINEを返した。


陽翔はもう一度目を瞑り寝たフリをした。

しばらく梨沙は部屋にいたが夕方になり家に帰ることに……


陽翔のおでこに手を当てた。

梨沙 (朝よりは下がってるかな)


机に薬やお水など買ってきたものを置き、陽くんのLINEにちゃんと飲むこととLINEを送った。


部屋のどこかから通知音がかすかに聞こえて
梨沙は家に帰っていった。


梨沙が帰ると陽翔は体を起こしてLINEを見る。


陽翔 「はぁ……」


陽翔 (起きてたのに、話すと泣きそうで寝たフリをしてしまった。ごめん、梨沙)




〇陽翔の家


次の日の朝、陽翔の部屋を除くと掛け布団ははぐられベッドにはいなかった。


あれ?



〇ダイニング


1階のダイニングにも降りていった。

いなかったが奥の方からドアの音がしてシャワーを浴びたばかりの陽くんがいた。


上半身は裸でバスタオルで髪の毛をガシガシと拭いて乾かしながら歩いてくる。


梨沙 「陽くん、熱は?」


陽翔 「下がった、出かけてくる。」


梨沙 「もう1日休んだ方がよくない?昨日熱高かったのに」


陽翔 「呼ばれてるから……」


梨沙 「でも……」


梨沙は陽翔に近づいて手をおでこに当てようとしたら腕を握られて触らせてもらえなかった。


梨沙 「陽…くん」


陽翔は冷蔵庫から水を出してゴクゴクと飲み出した。


梨沙 「あっ、あのね、思い出したの、昔熱出した時に陽くんがよく食べたいって言ってたもの……」


陽翔 「え?」


陽翔は水を飲むのをやめた。


梨沙は引き出しからチョコ味のコーンフレークを出した。


梨沙 「ほら、これに牛乳をかけて柔らかくして食べるのが好きだったでしょ、おかゆが嫌っていってて……」


陽翔 「あー、そうだったかな……でももうおかゆも食べれるよ、梨沙は6歳の僕で止まったままなの?」


梨沙 「…っ、そういう訳じゃないけど、食べるかなって……食べる?」


陽翔 「いや、さっきバナナ食べた」


陽翔は残りの水を飲み干してテーブルに置いた。


梨沙はドキドキしていた。

凄くいい体をしていて乾ききってないまだ少し濡れた髪の毛

ちゃんと鍛えられているほどよい筋肉


いつも寒い寒いって縮こまっていた印象だったのにギャップがありすぎる。


じーっと思わず陽くんを見ていた。


陽翔 「何?」


梨沙 「ううん、あっ、じゃあまた朝食にでも食べてね、ここに入れてるから」


梨沙はコーンフレークを片付けた。


陽翔はリビングに行き服を着始める。


陽翔 「今日は食事いらないから」


梨沙 「あっ、わかった。」


陽翔は黒いタンクトップに黒いシャツを着た。


梨沙はリビングを覗く


梨沙 「あれ?そんなシャツ買ったっけ」


陽翔 「買ってもらった。」


陽翔は茶色の高そうなスラックスをはいた。


ソファにはロングコートもかけられていた。


陽翔は洗面所に行き髪をセットし始める。


靴下も、靴も新しいブランドの高級品が置かれてあった。


梨沙 (まだ高校生だよ、陽くんは)


陽翔は2階にも上がりバタバタ支度をしていた。


全部コーディネートしてくれたであろう陽翔の今日の格好


マフラーだけ巻いてと頼まれた。


梨沙 「ちゃんとした事務所なんだよね?」


陽翔 「うん」


陽翔のLINEが鳴り開くとすぐポケットに入れた。


陽翔 「行ってくる、鍵閉めといて」


梨沙 「わかった」


陽くんはすぐに玄関を出ていってしまった。

バタンと車のドアが閉まる音がして車の音が遠ざかっていった。


陽くん……
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