帰国子女の彼と過ごす日々はきっと甘くなるだろう
〇梨沙の家のダイニング


梨沙は鍋の準備をしていた。

何鍋にしようか……先輩の事はとりあえず考えないようにして白菜を切っていた。夕食の準備をしなければならない。

陽くんの好きなものが全くわからないのでシンプルな鶏肉の水炊きにした。

材料は切れた。帰ってきてから火をつけるだけ、シメはうどん、ラーメン、雑炊と何でも出来るように準備万端

これならママは何も言わないでしょ!


しばらくリビングでくつろいでいると車が停まる音がした。


ママ 「ただいま〜」


ご機嫌なママの声だ。



〇梨沙の家の玄関


ママは玄関を入ると着替えてくると言って早々に中に入っていった。

その後、パパがスーツケースを持って入ってくる。

後ろから玄関より高い?頭を下げてぬっと入ってくる人がいた。

頭を下げたはずなのに上げるのが結局ちょっと早くて後頭部を軽くぶつけた。



陽翔 「いてっ!」


梨沙 「あっ、大丈夫?」


思わず声をかけると目が合った。


吸い込まれそうな大きな瞳の色は茶色くて髪はグレー、短髪の前髪をワックスで上げて立たしていた。

ゲームのキャラ?と思うくらい綺麗な顔

陽くんてこんな人だったっけ……

昔の面影は全くなかった。といっても梨沙はあまり憶えてないのだからわからないけどやっぱり少し懐かしい気持ちにはなった。



ママ 「梨沙〜」


自分がじっと陽くんに見惚れていたのがママの声で我に返った。


梨沙 「あっ、はーい」


急いでダイニングに走って行った。

鍋の準備しなきゃ



〇ダイニング


ママとパパと陽くんの3人はリビングでお話をしていた。

時々返事をしている陽くんの声も少し低音で落ち着いた話し方だ。



梨沙 「みんな、用意できたよ」


梨沙が声をかけると3人は椅子に座った。


3人家族の梨沙の家は梨沙の隣がいつも空いている。

必然にそこは陽くんの席になった。


みんなに鍋をとりわけていく梨沙


梨沙 「陽くん、食べられないものはある?」


鍋の中をじっと見ていた。


陽翔 「……ないと思う」


梨沙 「はい、どうぞ、ポン酢はお好みでね」


鍋から小鉢に入れて陽翔の目の前に置いた。

梨沙はママとパパのもついであげて自分の分もすくいみんなで食べ始めた。


陽翔 「いただきます」

フーフーと冷ましながら食べ始めた。



陽翔 「お〜、I love it !」


梨沙 「ん?」


今ラブって言った?


陽翔 「あー、すごく好きな味ってこと」


梨沙 「デリシャスじゃないんだね」


陽翔 「書くのはそっちが正解だと思う。僕のは日常会話みたいなものだから」


フーフーとまた冷ましながらぺろっとたいらげた。


梨沙 「おかわりいるでしょ?」


久しぶりなのに何も違和感なく話せる。


陽翔はモグモグしながらうんうんと頷いている。


梨沙はまた小鉢に入れてあげた。


ママ 「陽翔くんは量はよく食べる方?」


陽翔 「食べる……と思う…ます」


パパ 「体も大きいもんな」


陽翔 「でも、太らないように言われてて、トレーニングと食事……なんとか……」


考えている……


梨沙 「食事制限ね」


陽翔 「そう!それを事務所に言われてる。」


梨沙 「事務所?」


ママ 「梨沙、陽翔くんはモデルにスカウトされて日本に戻ってきたのよ」


モ、モデル!?
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