もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 契約結婚を誓うキスに心を震わせるはずがないと伝えるように、平常心を装って優史を抱きしめ、つきたての餅よりもやわらかい頬に口づけをする。

「きゃ!」

 さっきはボーロがなくて泣きそうだった優史がすっかり機嫌を直し、キスに喜んで私の頬にお返しをする。

「仲のいい親子だな」

「偽装でも結婚するなら、蒼史さんもこうなりますよ」

 こうなってもらいますよ、と言外に込めて告げる。

 彼に優史との本当の関係を伝えるべきかどうかは慎重に考えたい。私自身が傷つきたくない気持ちももちろん大きいが、やっぱり第一に優史の心を守りたいから。

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