もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
愛しているのはひとりだけ
 織部柚子、という四文字を無意識に手もとのメモに書いていた。

「あれ、書き損じですか? 珍しいですね」

 もとがメモ用紙だったとわからなくなるまでくしゃくしゃに握りこんでからゴミ箱に放ると、スタッフルームに入ってきた看護師が興味深そうに話しかけてきた。

「少しぼんやりしていたようで」

 俺がそう言うと、彼は眉を下げて苦笑いをする。

「八柳先生は働きすぎなんですよ。ほかの先生たちも言ってました」

「この程度のスケジュール、外科医ならこなして当然です」

 本当にそう思っているから返したが、看護師の苦笑いは変わらない。

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