もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 思い出したように話を変えられて、忘れようとしていた人の名がまた頭の中によみがえる。

「いえ、知り合い……のお子さんですね」

 柚子との再会はついさっきの話だが、もう噂になっているというのか。

 ……時間に余裕があるからといって、様子を見に行かなければよかった。

「ああ、お子さんでしたか。すごくきれいな方と話していたと聞いたので、てっきり」

「……いえ」

 どう答えるべきか正解を見つけられず、曖昧に濁しておく。

 柚子は『きれいな女性』だと思われているのか。

 たしかに四年振りに会った彼女はきれいになっていた。

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