もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 連絡も取らなかった四年という月日は、俺にとっては長かった。

 たった一度触れただけの彼女のぬくもりを何度も夢に見て、隣に誰もいない寂しい朝を同じ数だけ迎えた。

 会いたいかと言われたら、会いたい。

 だから俺は担当医でもないのに、彼女の息子を──柚子を見に行ったのだ。

 再会が本当に夢ではなかったのだと確認したかったから。

「お疲れ様です、八柳先生」

「お疲れ様です」

 すれ違う医者や看護師と短く言葉を交わし、ときどき患者と話しているうち、自然と足が外に向いていた。

 スタッフ用の駐車場へ向かい、誰もいないことを確認して病院の壁にもたれる。

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