もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 答えなければ延々と聞かれ続けることになるのだろうか。それは面倒すぎるから勘弁してもらいたい。

 下手に柚子の前で聞かれるよりはマシかと思い、適当に答えておく。

「ああ、好きだ。これで満足か?」

「雑に流しちゃって。最低」

「……なにがしたいんだ、君は」

「振られたから嫌がらせ」

 昔から美里はよくわからない女だった。

 気まぐれにちょっかいをかけてくるところが面倒で、たまにやたらとお節介を焼いてくるのも面倒だ。

 ……これが柚子だったら、構ってもらいたいのかと微笑ましい気持ちになれるのかもしれないのに。

 そう考えてから、無意識に胸の内に浮かんだ温かな感情を押し殺す。
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