もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました

「それはどうも。……じゃ、今度こそ帰るわね」

 何度もしつこく結婚を迫ったにしては、あまりにもあっさりした態度だった。

 そのうしろ姿が見えなくなってから、思ったことを口に出してしまう。

「本気でないなら求婚なんてするな」

 風に流された言葉がまた俺自身の胸に刺さる。

 そう、本気で愛していないなら求婚なんかするべきではない。

 ……だが俺は、愛している相手にこそ求婚すべきではない人間だ。
< 126 / 281 >

この作品をシェア

pagetop