もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「姉ちゃんが幸せじゃなかったら、ユウも幸せになれないよ」

 大和の表情がとても真剣だったからか、妙にその言葉が胸に響いた。

「帰ってきたくなったらいつでも来い。姉ちゃんたちのものは取っておくから」

「いいよ、邪魔になるでしょ?」

「帰れる場所が必要だろ」

 さっきから大和の言葉が沁みる。

 両親を早くに亡くし、育ててくれた祖父母も亡くなった今、私たちに実家と呼べる家はない。

 大和と優史と私の三人で住んでいるこの2LDKのマンションがそうだと言われたら、たしかにと納得せざるをえないものがあった。

「ありがとうね、大和。なにからなにまで」

「別に。普通」

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