もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました

　大和は素っ気なく言うと、話を逸らすように遊んでいる優史のもとへちょっかいをかけに行った。

　照れて見えたのはきっと私の気のせいだろう。



　持ち物のほとんどを大和のもとへ残し、蒼史さんの運転する車で彼の自宅へ向かった。

　都内の一等地に立った一軒家の前で車が止まるも、予想していなかった豪邸を前にすると、緊張で足が動かなくなり、すぐ門をくぐれない。

「ここが蒼史さんの……？」

「広いだけでなにもない家だ。遠慮するな」

　蒼史さんはそう言って大きな旅行バッグひとつ分しかない私の荷物を運ぶ。

　私は夢の中にいる優史を抱えたまま、戸惑いを隠せずに彼の背中を追いかけた。