もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 漆喰の塀に囲まれた家には、優史が駆け回れるだけの広さをした庭がある。

 蒼史さんが言うように芝生が広がるばかりで植物や池といった、庭にありがちなものは見あたらない。

 犬でも飼えば賑やかになりそうだけど、彼が動物と和やかに暮らしている姿はいまいち想像できなかった。

「柚子」

「あ、はい」

 ぼうっと立ち尽くして庭を見ていると名前を呼ばれる。

 両手を優史で塞がれた私が入れるよう、蒼史さんは玄関の扉を開いて待ってくれていた。

「ありがとうございます」

「夫婦になるんだから敬語は使わなくていい」

「……慣れてしまったので」

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