もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
なぜ、彼は家族を拒むのか

 婚姻届を提出し、正式に蒼史さんの妻として暮らすようになってもうひと月が経とうとしていた。

「ユウくんはねー、これとこれ。すき」

「……違いがわからないな」

 最初こそ戸惑っていた優史も、今は私より蒼史さんに話しかけたがる。

 私が仲良くしなさいと促したわけではない。

 蒼史さんが優史を気にかけるから、優史が心を許して自分から距離を詰めるようになったのだ。

 正直に言うと、少し意外だった。

 蒼史さんはひと月も一緒に暮らしているのに、いまだに優史の名前をユウだと思っているし、私に優史がどんな子なのか、どういうふうに育ててきたのかと聞かない。

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