もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 患者は別として、彼が子供と親しくする姿はあまり想像できなかったから、寂しいとは思いながらもそういうものなのかと考えていた。

 蒼史さんが形だけの父親になるのなら、私は二倍以上の愛情を優史に注げばいいんだと思っていたのだけれど。

「この車も、こっちの車も同じ見た目だろう」

「ちがう!」

「救急車なら見慣れているんだが……」

 理解を得られなくて怒っている優史を、蒼史さんが困った表情で見つめている。

 また彼の珍しい顔を見てしまった。

 私が知る蒼史さんはもっとクールで表情も硬い人だったのに、優史は次々に彼の新しい表情を引きだす。

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