もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「ユウくん、パパはまだお勉強中なんだって。だから怒らないの」

「ママ、わかるでしょ?」

「ママはユウくんと一緒にお勉強したからだよ」

「いーや」

 優史がむっとした顔のまま、蒼史さんの服の袖を掴む。

「わかった。もう少しがんばってみよう」

 このひと月で知ったことだが、蒼史さんが優史にかける声はとても優しい。

 それを羨む気持ちがあるなんて、ふたりには知られたくないところだ。

「じゃあ、これ」

 優史が遠慮なく蒼史さんに車のおもちゃを突きつける。

 ふたりの距離はひと月前に比べたら間違いなく近づいていた。

 一方の私は、蒼史さんが傍にいるだけで落ち着かない気持ちになる。
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