もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 それはそうだろう、と心の中でついツッコんでしまった。

 まだほとんど二語文で話す優史につられてぎこちない話し方になるのはわかる。

 でも蒼史さんはもともとプライベートで口数が多い方ではなく、微妙に言葉が足りないと思う瞬間もないわけではなかった。

「パパはお医者さんなんだよ」

 さっきと違い、今度は優史に説明をする。

 優史はぽかんと口を開けて蒼史さんを見てから、急に嫌な顔をした。

「きらい」

 そう言うと、優史は私に駆け寄ってきてぎゅっと抱き着いた。

「いたいのきらい」

「パパは痛いことしないよ」

 多くの子供と同じく、優史も注射が大の苦手だった。

< 160 / 281 >

この作品をシェア

pagetop