もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 病院と医者、そして注射が小さな頭の中で全部一緒くたに結びついているのだろう。

「病院が嫌いなのか」

「いえ、注射が……。白い建物を見るだけで家に帰ろうとしますし」

「今のうちに慣れておくべきだ。いざというときに困る」

「きらい」

 首を振っている優史に、蒼史さんが並べて置いてあったミニカーのひとつを差しだす。

 だけど優史はおもちゃを受け取らずに私の胸に顔を埋めた。

「嫌われたらしいな」

「今だけですよ。そろそろ眠いのもあると思います」

 私が言って数分も経たないうちに、腕の中の重さが増した。

 眠くなった優史が私に身体を預けているせいだ。

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