もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 この気持ちはまさかと焦りを感じていたものの、彼女との時間が心地よすぎてずるずると偽装恋愛の期間を延ばした。

 ほんの五分だろうと、ふたりだけで特別なひと時を過ごせるならそれでいいと思っていたのに、四年前のあの日、俺は自分が思う以上に柚子を求めていた事実を突きつけられた。

 柚子の魅力に気づいたのが自分だけだなんて、どうして思えていたのだろう。

 彼女が同期の内科医に誘いをかけられたとき、信じられないほど激しい独占欲を抱いたのを思い出す。

 自分以外の誰かが彼女の特別な笑みを独り占めして、あのやわらかな肌に触れるなんて思いたくなかった。

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