もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 それが許されるのは俺だけであってほしかった。

 いや、俺だけでなければならないと、傲慢にも思ったのだ。

 奪われる前に彼女のすべてを俺のものにしたくておかしくなりそうだった。

 どんなに難しい手術でも冷静に対処する医者だと、散々周りから評価を受けたこの俺が、柚子に関することだけはまったく冷静になれないのを思い知った。

 そうか、俺の中ではとっくに偽装恋愛から本気の恋愛になっていたのか──。

 自分の気持ちに気づくも、だからといって頭が冷えるわけではなく、ますます激しい熱を感じながら衝動のまま彼女を求め、そして……。

 ……深く、後悔した。

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