もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 七時間にも及ぶ手術を終えると、病院の廊下に硬い表情をした大和が立っていた。

 その腕の中で優史が眠っている。ずっと泣いていたのか、頬に残る涙の跡がまだ新しい。

「八柳先生、お久しぶりです」

「……お久しぶりです」

 こんな形で再会を果たしたくなかったと大和の方も思っているだろう。

 かつて自身の手術を担当した医師が、今度は姉の生死にかかわっているなどと想像できるわけがない

「姉ちゃん──姉は無事なんですか?」

「手術は成功しましたが予断を許さない状態です。長時間の手術の影響で後遺症が出ないとも言い切れません」

 希望は与えたいが、必要以上の期待は持たせられない。

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