もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
自分が愛される人間ではないとわかっていたから、彼女にとって特別な存在でないと突きつけられるのが嫌だった。
同時に、彼女にとって特別な存在だと知るのも嫌だった。
彼女の穏やかで優しい愛に応えられるものが、俺の中にはないから。
「本当に申し訳ない」
大和に向かって頭を下げ、俺に言える精いっぱいを伝える。
「……姉ちゃんを助けてください」
長い沈黙の後、大和が震える声で言った。
顔を上げると、彼女に似た穏やかな瞳から涙があふれている。
「ああ、もちろんだ」
医師として以上に、柚子を大切に想うひとりの男として答える。