もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「もう彼女につらい思いはさせない。……この命に代えても」



* * *



 目を覚ますと、そこは清潔感のある個室だった。

 家ではなく病院だと気づき、事故に遭ったときの恐怖がよみがえる。

「ユウくん」

 無意識に出た声はかすれていて、自分がしばらくまともに喉を使っていなかったんじゃないかと思わせた。

 起き上がると身体がやけに重く、手足にうまく力が入らない。

 腕に刺さった点滴を見上げてから周囲を見回すと、思った通りナースコールのボタンがあった。

 迷わずボタンを押してすぐ、看護師がやって来る。

「おはようございます、八柳さん」

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