もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 織部です、と言いそうになって自分が結婚していたのを思い出す。

「息子はどこにいますか?」

「優史くんでしたら、弟さんと一緒です。さっきまでお見舞いに来ていたんですが、連絡してきますね。今ならまだ間に合うと思います」

「ありがとうございます。お願いします」

 看護師が急いで部屋を出ていくと、入れ替わりに白衣姿の蒼史さんが入ってきた。

 彼の姿を見た瞬間、心臓が大きく跳ねる。

「顔色はいいな。体調は?」

「あ……ええと、元気です。たぶん」

 ベッド脇の椅子を引き寄せて座った蒼史さんは、どこからどう見てもお医者様だった。

 私を心配して見舞いに来た夫……とはとても思えない。

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