もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「君にだけは幸せでいてほしかったが、俺には叶えられない」

 やっぱり、と心の中でつぶやく。

 彼は自分の気持ちを封じ込めて、私が幸せな家庭で一生を過ごせるように手を放したのだ。

「そのせいでつらい思いをさせてしまった。優史のことも、ひとりで大変だっただろう。本当に悪かった」

「……私だって、ずっと優史のパパが蒼史さんだって言えませんでした」

「言わせなかったのは俺だ」

 お腹の上に置いていた手を蒼史さんに握られる。

 その手があまりにも優しかったから、泣きたくないのに目の前が涙で滲んだ。

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