もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「あのときの子供だって知ったら、したくない結婚を強要することになるんじゃないかって思ったんです。よい医者になりたいって言ったあなたの人生を邪魔するかもしれないと思ったら……」

 そこまでひと息で言い切って、彼が口を開く前にさらに続ける。

「いつか別れるつもりでいるなら、他人のままでいた方が優史にとってもいいと思いました。だけど……きっと間違っていたんです。もっと早く言うべきでした」

「そんなことはない。君がして当然の選択だ。すぐに話そうと思えるような相手になれなかった俺が悪い」

 初めてちゃんと蒼史さんと向き合えた気がして、私からも彼の手を握り返す。

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