もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「言いづらいですけど、それは本当にそうだと思います……。だって世の中には、仕事と家庭を両立させられる人がたくさんいるでしょう? それに、反面教師という言葉もありますよ」

「返す言葉もない」

 苦笑いして言うと、蒼史さんは私にキスをしようとした。

 だけど直前まで近づいたのに、触れずに離れてしまう。

「すまない、調子に乗った。謝罪したからといって、君への贖罪が終わったわけではないのにな」

 この人は根本的にとても真面目で責任感が強いのだと思う。

 だから万が一にも同じ家庭を生み出さないように私を手放し、今も償えていないからとキスを我慢するのだ。

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