もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「そのくらい気を抜いて生きてもいいと思います。私だってその方がうれしいです」

「……君といると、今まで自分がどう生きていたのか思い出せなくなる」

 彼がふっと笑ったかと思うと、待ちわびていたぬくもりが唇に触れた。

 蒼史さんはこの一瞬を噛みしめるようにゆっくりと唇を重ね、キスをされた私の反応を見ながら優しく食んだ。

 彼とは何度かキスをしたけれど、その中でも一番甘いキスだと思った。

 もしも今、病院のベッドに繋がれていなければ飛び上がっていたかもしれない。

「患者に手を出すような医者になった覚えはなかったんだがな」

「妻が相手でもだめなんですか?」

< 260 / 281 >

この作品をシェア

pagetop