もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「公私混同をすべきではないと思っている。……今は例外だ」

 個室なのをいいことに、蒼史さんは優しいキスを何度も与えてくれた。

 彼のぬくもりを感じるたび、自分がどれほど飢えていたのかを思い知らされる。

 ときどき私の髪をなでる手は、壊れ物を扱うように不安げだ。

 それを受けて、ようやく理解した。

 彼が私に触れるとき、いつもぎこちなかったのは気持ちがないからじゃない。

 触れることさえためらうほど、大切に想ってくれていたからだ。

「こんな俺でも受け入れてくれるのか?」

「たくさんキスをした後で聞くのはずるいと思いますよ」

「それもそうだな」

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