もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 真面目に返してから、蒼史さんが堪え切れなかったように笑った。

 その顔を見て、私は彼のそんな気の抜けた笑顔に惹かれたのを思い出す。

「蒼史さんこそ、結婚したくないって言ってたのにいいんですか? こんなふうにされたら、もう離婚したくなくなっちゃいますけど……」

「ああ、いい。そもそも君と離婚するつもりはなかった」

「えっ、契約結婚なのに」

「……別に本気で女性関係に悩んでいたわけではない。困っていると言えば君が手を貸さずにはいられないのを知っていたから、そう言ったまでだ」

 彼との生活で浮かんだいくつもの疑問が解けて消えていく。

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