もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 甘えるように絡んでくる指から逃げようとするも、蒼史さんは私の手を捕らえて放そうとしない。

 たしかに彼は結婚してすぐ、私とまた肌を重ねた。

 すぐあんなふうになるとわかっていたから、敢えて私を避けていたというのか。

「嫌われているわけじゃなかったんですね」

「その逆だ。いつもどうやってこの気持ちを抑えるか悩んでいた」

 これまでずっと我慢していたからなのか、蒼史さんの言葉はどれも直球だった。

 与えられていなかった分、彼のうれしい言葉のひとつひとつが胸に染み込む。

 蒼史さんは私を見つめると、一度も見たことのない屈託のない笑みを浮かべた。

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