もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 その言い方だと、すでに大和は蒼史さんになにかをやらかしたように聞こえる。

「大和にも優史の父親の話をしないと……」

「もう知っている」

「いつの間に話したんですか? 私が手術しているとき……?」

「君の手術中は俺も執刀中なんだが、そんなようなものだ」

 蒼史さんの手が私の髪に下り、愛情を込めてなでる。

 彼がそんなふうに触れてくれるのがうれしくて甘えていると、廊下の方から調子はずれな歌声が聞こえた。

「蒼史さん、大和たちが来たみたいです」

「あの歌声は優史か。音痴なのは俺に似たんだろう」

「……音痴なんですか?」

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