もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 思わず尋ねると、蒼史さんはしまったと言いたげに自分の口もとを手で押さえる。

 彼に意外な一面があるなんて知らなくて、楽しくなった。

「今度、三人でカラオケにでも行きましょうか」

「そんな暇はない」

「家族になってくれるんですよね? じゃあ家族サービスも必要ですよ」

 一理あると思ったのか、蒼史さんがぐっと言葉に詰まる。

「私、蒼史さんについてはわからないことの方が多いんです。これから全部教えてくださいね。好きな食べ物とか、趣味とか」

「……今まで一度もそういう話をしたことがなかったからな。君が教えてくれるなら、俺も話そう。といっても、おもしろい話は期待するな」

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