もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 それについて言及すると、彼は苦い笑みを浮かべる。

「あのときはまだ君の子供として接していたからだな。自分の息子だと思うと、急に未知の生物かなにかに思える」

「なるほど……?」

 こうやって聞くとひどい父親に思えるかもしれない。

 でも、蒼史さんが優史を見つめる目はとても優しくて愛情に満ちている。

 たぶん彼は器用そうに見えて不器用なのだ。

 仕事ならば上手に子供の相手もできるのだろうが、プライベートとなると急にスイッチが切れてしまうのだと思う。

 最初から完璧に心を通わせるのではなく、試行錯誤しながら徐々に距離を詰めていくあたりに、息子を特別扱いしたい彼の意識が伝わった。

< 273 / 281 >

この作品をシェア

pagetop