もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 まだ自主的にここまで距離を詰められないふたりも、私が促せばその限りではない。

「パパ、ちゅ!」

 優史が蒼史さんに抱き着いて頬にキスしようとする。

 だけど唇が触れる前に、心底不思議そうな顔をした。

「パパ……?」

「パパでいいんだよ」

 どうやら私につられてパパと呼んでしまったことに疑問を覚えたようだ。

「おしゃさん? パパ……」

「混乱しているようだがいいのか?」

「蒼史さんからもパパだよって言ってあげてください。そうしたらそのうち混乱しなくなるはずですよ」

「そう言われてもだな」

 首をひねって考えている優史を見つめ、蒼史さんが緊張した顔で口を開く。

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