もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「パ……パパ、だよ」

 わざとやっているのかと思うくらいぎこちない自己紹介だった。

 真剣にやっているのだとわかっていても、笑いそうになる。

 彼は本当にこういった触れ合いに慣れていないのだ。

 それでも歩み寄ろうとしてくれるのがうれしくて、切なくなる。

「パパ……おーしゃさん……そしさん……」

「蒼史さんは違うだろう。それはママだけでいい」

 蒼史さんの心地よい声でママと呼ばれて恥ずかしくなる。

 今のは完全に不意打ちだった。

「ママ、ゆず」

「それは俺だけが呼んでいい名前だ。お前は呼ぶな」

「蒼史さん」

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