もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 彼はきっと、自分がされたかったことをすべて息子にしてあげるのだろう。

 ずいぶんと回り道をしてしまったけれど、ようやく親子として歩み始めたのを幸せな気持ちで眺めた。

「ママにもした方がいいのか?」

「え?」

 不意に蒼史さんが私の手を引く。

「優史、どうしてほしい?」

「えっ、ちょ、ちょっと……」

「ちゅ、しましょ!」

「だ、そうだ」

 突然、親子の連係プレーを見せないでほしい。

 優史の前でキスなんて恥ずかしいと思ったのに、蒼史さんは私を引き寄せて顎を持ち上げた。

「息子のおねだりは可能な限り聞いてやると決めた。だから君も協力しろ」

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