もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました

「でも退院してからもしばらくは安静に過ごすよう言われました。無理はしちゃいけないって。……よく知っていると思いますけど」

　急に甘い雰囲気になって心臓がうるさく騒ぎだす。

「どこからが無理なのかは把握している。医者だからな」

　医者ならむしろ、絶対安静に協力するべきじゃないだろうか。

　自然とまた唇を重ねそうになっていた私たちの間に、にゅっと優史が割って入ってくる。

「ユウくんも！　いっしょ、ねましょ！」

「……そうだな」

　蒼史さんの顔には、息子に添い寝を誘われて喜ぶ父親の表情と、妻と一緒に寝たい夫の表情が入り交じっていた。こんなに感情豊かな人だったかと感動を覚える。

　よい医者であるために一度は家庭をあきらめようとした蒼史さんだけど、この様子ならなんの問題もなさそうだ。

　彼は家族を蔑ろにしないし、ちゃんと思いやりを持って接する。

　これからも医者として生きていく蒼史さんに、私と優史の存在がいい影響を与えられたらいいと心から思った。