もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
私を捉えた瞳に浮かんでいた火が、いつの間にか激しさを増している。
「それに〝先生〟じゃないだろう」
先ほどとはうってかわって優しく輪郭をなぞられ、全身が期待に震える。
「名前で呼べと言ったはずだ」
「……はい、蒼史さん」
苗字の八柳ではなく、下の名を素直に口にしてすぐに後悔する。
私にとってどれだけ特別な響きを持つものなのか、声に出した瞬間思い知った。
私が小さな声で呼んだのが聞こえたからか、厳しい表情だった蒼史さんの口もとにようやく微笑が浮かぶ。