さよならの続き
「…俺も、誰かさんと来たくて何度も願った。振り向いたら、誰かさんが微笑んで立っていたりしないかなって」

航平が視線を落とし、長い睫毛で瞳が隠れた。

「バカだな。俺はその誰かさんを、病院に運ばれるくらい傷つけたのに」
「え…」

どうして、なんて問わなくても、そのことは吉岡さんと渚しか知らない。
吉岡さんが航平に言ったんだろう。

こちらを向いた彼は、深刻な表情で、ごめん、と言った。

「今さら謝っても何の意味も成さない。ただの自己満足にしかならないと思った。だけど、やっぱり謝りたい。…本当にごめん」

風になびく髪に頬をくすぐられながら、頭を下げる彼を茫然と見つめた。

確かに、あの時私の心に傷をつけたのはこの人だ。
だけど別れというのは多くのカップルに訪れるものだし、3年も経ってこんなふうに謝られるようなことじゃない。
ましてやあのとき体調を崩したのは、航平が直接的な原因じゃないのだ。

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