さよならの続き
「星野さーん、お疲れ様」

社食でひとりランチを食べていたら、歌うように私の名前を呼んだのは吉岡さんだった。
彼もトレイを持っていて「ご一緒してもいい?」と微笑んで尋ねた。

「はい、もちろん。話し相手がいなくて寂しかったんです」

からっと笑いながら吉岡さんは向かいに座った。
年上ではあるけど、吉岡さんはフランクでとても話しやすい。
渚曰く『人たらし』。
あまりいい言い方ではないけど、間違っていないと思う。

「そうだ。私、ゴールデンウィーク明けにまだ渚に会ってないんです。挨拶どうでしたか?」
「いやもーすごい緊張したよ。胃薬飲んだ。まあ何とか無事に済んだけどね」
「よかったですね」

大袈裟に肩を落とす吉岡さんに笑ってしまった。

渚と吉岡さんは来月挙式をすることになっているけど、その前に予定外に渚の妊娠が発覚したのだ。
連休にその報告をしに渚の実家へ行くことになっていて、厳格な渚のお父様に怒られやしないかとふたりとも心配していたらしい。

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