さよならの続き
不意に駆けてくる靴音がして、航平と少し距離を取った。
入ってきたのは陽太だった。
動揺しつつも、お疲れ様ですと声をかける。
「お疲れ様です」
急いでいるんだろう。小銭を入れて小さなコーヒーの缶を買い、そのままゴクゴクと飲み干した。
そして私と航平を交互に見て、航平が首からかけているIDカードが『医事営業部5区課長』になっているのが見えたようだ。
「星野さんの上司ですか?」
航平は質問の意図がわからないらしく、ええ、と戸惑い気味に答える。
「俺、星野さんとお付き合いしてます、営業三区の金井と言います」
「ちょっと…っ」
こんなところで何を言いだすのかと慌てたけど、陽太は真っ直ぐに航平に向き合ったままだ。
「元彼だかなんだか知らないけど、有梨を誘惑しないでくださいね」
とんでもなく失礼な態度にヒヤヒヤしたけど、航平はふっと笑った。
「愛されてるね、星野さん。いい彼氏だな」
陽太は航平に対する対抗心なのか、プライベートの口調を私に向ける。
「有梨、今日忙しくて電話できないと思う」
「う、うん」
「有梨も早く事務室に戻れよ」
「うん」
陽太は航平に軽く頭を下げて去って行った。
入ってきたのは陽太だった。
動揺しつつも、お疲れ様ですと声をかける。
「お疲れ様です」
急いでいるんだろう。小銭を入れて小さなコーヒーの缶を買い、そのままゴクゴクと飲み干した。
そして私と航平を交互に見て、航平が首からかけているIDカードが『医事営業部5区課長』になっているのが見えたようだ。
「星野さんの上司ですか?」
航平は質問の意図がわからないらしく、ええ、と戸惑い気味に答える。
「俺、星野さんとお付き合いしてます、営業三区の金井と言います」
「ちょっと…っ」
こんなところで何を言いだすのかと慌てたけど、陽太は真っ直ぐに航平に向き合ったままだ。
「元彼だかなんだか知らないけど、有梨を誘惑しないでくださいね」
とんでもなく失礼な態度にヒヤヒヤしたけど、航平はふっと笑った。
「愛されてるね、星野さん。いい彼氏だな」
陽太は航平に対する対抗心なのか、プライベートの口調を私に向ける。
「有梨、今日忙しくて電話できないと思う」
「う、うん」
「有梨も早く事務室に戻れよ」
「うん」
陽太は航平に軽く頭を下げて去って行った。