さよならの続き
茫然とそれを見ていたら、航平が深刻そうに顔を上げた。

「一時期あんまりうまくいってないのかと思って心配してたけど、それ、俺のせいなんだな」
「え」
「金井くんが俺のことを『元彼』だって知ってるってことは、俺のせいで彼を不安にさせてたんじゃないのか?」
「いえ、課長のせいじゃないです。これは私たちの問題で…」

航平は、ごめん、と呟き、薄く微笑みながら立ち上がる。

「もう話しかけないようにするよ。金井くんと幸せにね」

返事をできないまま、休憩室をあとにするその背中を見送った。

これでいい。最初からこうあるべきだった。
そもそも課長なんて、本来こんなふうに気軽に話すような相手じゃないのだから。
頭の中ではちゃんと理解しているのに、心にぽっかり穴が空いた気持ちになる。
握られた紅茶のペットボトルが、感覚がなくなるほど右手を冷やしていく。
泥にはまったように足が重くて動けず、しばらくその場に立ちつくした。
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